以前より人員が多少減ったことにより生じた空き部屋の一つをリウは図書室に改良していた。
かつてサイナスにあったそれを参考に、交易ついでに手に入れた蔵書を収納している。特にコンセプトは無く、詩集から帝王学、経済学、はては料理の本まで雑多なものだ。
だが、この城の訪問者の顔ぶれを考えるとそのほうが、らしい、と思える。
インテリアも統一感無く椅子も机もバラバラだったが、それがより味がある。
また、サイナスの図書室と異なるのは、扉を取り払い閲覧を希望する者皆に解放しているとこだろう。
そしてそこは彼手ずから企画発案したものだけあって、リウのお気に入りの空間だった。
今日も彼はそこで島国からやって来た蔵書を眺めていた。
大陸とは違う風土について見地を深めてみようじゃないか。
「やあ、なかなか素敵な部屋じゃないか」
リウがお気に入りの深緑のソファーに寛いだ体勢でいると、そこへ聞き覚えがあるが、少し懐かしい声が聞こえてきた。
入り口の方を見やると相変わらず何を考えているのか読めない、食えない表情をする彼、ツァウベルンが居た。
「わっ…、ツァウベルンさんじゃあないですか。お久しぶりです」
リウはパタン、と読みかけの本を閉じるとテーブルに置き立ち上がり彼の方に向う。
「やあ、リウ君久しいね。まさかこの城にこんな立派な蔵書室があるとは思っていなかったよ」
お、我がライテルシルトの本があるじゃないか、とぶつぶつと喋りながら、でも楽しそうに部屋を自由に彼は検分していた。
彼は以前この城に居たころと変わらない、ラフな服装で訪問していた。リウは後から知った事だが彼はライテルシルトのどこかの公爵家の貴族様らしいそうだ。
尤も、こちらの団長様が団員たちの身分種族年齢等一切不問にしていたので、そういうことは彼個人に対する情報の一つ、という意識しかなかったが。
「気に入っていただけて何よりです。部屋が少し余っているので俺個人の趣味で図書室にしちゃいました。雑多で整頓されてないんですが、個人的には結構気に入っています」
リウの言葉を聴きツァウベルンもにこりと微笑み「ああ、私もとても気に入ったよ」と偽り無い本心を述べた。
「ところで、急なおいでですが何かこちらに来る用事があったんですか?」
おいそれと貴族様が他国に出れないことはリウも重々解っていたし、恐らく彼クラスが来る場合先触れがあるのが常だ。
「いや、ずっとこちらの様子を見に来たい、と帰国してからずっと思っていたんだよ。でも回りの人間は頭が固くてなかなか許してくれなくてね。別に私一人いてもいなくても国は回るというのに大げさなんだがな」
やれやれ、といった表情を浮かべツァウベルンは肩をおどけたようにひょいと竦めた。
「で、なんとか都合をつけて少しの間だけこちらを訪ねる事が出来たというわけさ。懐かしい顔ぶれにも会いたいしな。まったくビュクセ君も遠慮せずに同行すればよかったのに」
「そうですか、久しぶりなんでゆっくりしていってください。そうそう、丁度明後日ティアの誕生日なんですよ。丁度いい時に来ましたね。パーティとかささやかですがやる予定なんですよね」
リウは嬉しそうにパーティの話を彼に持ちかけた。
「リウ君、彼女の誕生日の事は私も知っているよ。その為に来たのだからね」
そう言うと彼は口角を上げて笑った。