第3話

 

 
 ティアとリウ、そして客人であるツァウベルンがわいわいと送られたプレゼントの検分をしていると、また広間に一つ慌しい足音が。
「団長さーん!大変大変、今日はまたお客様よー!」
 相変わらず早口なモアナは、走ってきたのだろう、息を少し切らせながら部屋にやって来た。
「客ぅ?ツァウベルンじゃなくてまた別に?今日そんな予定あったっけ……」
 ティアはリウの方を向いたが、リウは知らない、とばかりに首を振った。
「とにかく、急いで下に来てね!すっごいんだからっ!」
 言いたい事は言った、とばかりにモアナは踵を返し大慌てで立ち去った。
「モアナ、誰が来たとかせめて言ってから帰れよなー」
 ぶつぶつと愚痴りながら、ティアはお礼状を書いていた手を止め椅子から立ち上がった。
「二人とも一緒に行こうぜ」
 声を掛けるとティアは部屋を後にした。

「……………」
 リウは無言でツァウベルンの顔を見た。
「リウ君、私の顔に何かついているのかい?」
「ツァウベルンさん、何か誰が来るか知ってそうですよね」
 二人の視線がじっとりと交差した。
「さすがだね、リウ君。ご明察だ。私は来訪者のことは実は知っているんだ。でも楽しいから内緒にしておこうと思ってね」
 降参、とばかりにツァウベルンは軽く両手を挙げた。
「やっぱりね。でもま、悪い人が来るわけじゃなさそうだからいいですよ。さ、下に行きましょう」
 ツァウベルンもああ、と了承の意を唱えリウの後に続いた。


 
 エレベーターを降りると広間に搬入されていたのはまた大荷物で。豪華な化粧箱がいくつも置かれていた。
「な、また凄い荷物が……」
 率先して力仕事をやってくれるジェイルとロベルトが居ない今、運ぶのは自分しか居ないのに。
ティアは少し荷物の量に頭がくらくらした。
「ああっ、ティアさん!お久しぶりです」
 今回の来客はサルサビルの現国王であるシャムス、その人だった。傍らには久しぶりの兄との再会に幸せそうに顔を綻ばせているマナリルの姿もあった。
「シャムス!久しぶり!元気そうじゃん」
 シャムスの姿を見て、ティアは満面の笑みで彼の元に駆け寄った。
「ええ、おかげ様でなんとかやっています。ティアさんも相変わらずお元気そうで何よりです」
 二人はがっちりと、半年振りくらいの再会の握手を交した。
 成長期なのか、シャムスの身体は心なしか以前より一回り大きくなっているように感じられる。背は明らかに伸びており、体つきも少し太くがっちりしてきて大人の男に少し近づいているのだろうか。褐色の肌を彩る金の装飾具が男ぶりをあげている。
 そのうちかの父王の様に大きく成長するんじゃないか、という予感がティアの胸をよぎった。
「まさかシャムスが来るとは思わなかったから凄い驚いた。でも、会えて凄くうれしい」
 マナリルから多少は国に戻った彼の事は聞いていた。いくら人並みはずれて聡い彼でも、幼い身に国政の政はとても重圧だろうにサルサビル発展の為に全力で活躍しているらしい。
「こちらこそ、お会いできて嬉しいです。マナリルの顔も見たかったし、何とか都合をつけて来てしまいました」
 シャムスもとろけるような微笑を浮かべティアに微笑みかけた。
「ふふ、お兄様ったらティアさんに会えてとても嬉しそうですよね。私に会った時より嬉しそうなんですもん」
 マナリルも身内の再会に、少女らしい微笑を浮かべていた。その光景は見てるだけでも癒される、という感じでモアナもうっとりだった。
「ところでシャムス。この大荷物は何だ?マナリルへの土産、って訳じゃなさそうだけど…」
 シャムスとマナリルは互いに目を見合わせて、ティアの言葉にくすり、と微笑を浮かべた。
「まぁ、マナリルへの土産も勿論あるんですが。今回の持参品はティアさん、貴方への贈り物です」
「えーーーっ、何でっ!!」
 心底驚いたらしいティアの声がホールに響いた。その様を見たリウは隣に立っていたツァウベルンの方を見やる。
「ツァウベルンさん、この事も知ってたんですか?」
「ああ、実は私は此処に来る前にサルサビルの彼の所に立ち寄っていたんだよ。だからせめて、彼より早くこちらに来てやろうと思って急いできたのさ」
 ツァウベルンの物言いにリウは頭の中にいろいろな疑問符が浮かんでは消えた。
 そして、聞きたくないような考えが浮かんでしまうのは何故だ。




次からいろいろおきます

[09年 2月 25日]